golden-luckyの日記

ツイッターより長くなるやつ

リンゴの話

pyspa Advent Calendar 2021 17日めの記事です。昨日は@aodagによる「swayでwayland」でした。swayよさそうと思ってapt installしたらbusterにはなかったので、bullseyeに上げている間に書いています)

大学を出てニートをしていた時分には、リンゴ1個で昼ご飯を済ませることがあった。 そこだけ切り取るとアメリカの小学生っぽいけど、父方の実家である弘前の叔母がリンゴを箱で送ってくれて、でもすでに家族の団欒でリンゴを食べるような機会もなく、悪くなる前にがんばって毎日1個ずつでも食べていた、というのが実態に近い。 バイト先で昼休みにリンゴを丸かじりするのは、片手で済ませられるし、一人で過ごしたい自分の性にも合っていた。

未希ライフ、とき、グラニースミス

就職して自分の家族をもってからは、わざわざ自分でリンゴを買って食べることもあまりなくなった。 20代までに一生分のリンゴを食べたつもりでいたし、リンゴジュースは好きだけど、それはどちらかというと香料産業のパワーだ。 リンゴはまあリンゴだし、わざわざ買って食べることもないな、という温度感。 余談だけど、台湾に行くと当地でのリンゴの人気がすごくて、「リンゴを食べに札幌に行くツアー」とか見かける。 なんでリンゴのために日本に行きたいのか、素で疑問だった。 そもそも札幌はリンゴの産地じゃないし。 まあ、こっちもマンゴーを食べに玉井まで行ったりしているので、どっちもどっちではあるのだけれど。

DSC_0102

一年前までの自分のリンゴ観はこんな感じ。 そんな中、2020年の晩秋に近所のスーパーでたまたま「ぐんま名月」という銘柄のリンゴを見かける。 それまで群馬をリンゴの産地として意識したことがなかったし、なにより群馬だし、その名前を冠する心意気がおもしろくてつい買ってみた。 つまり、とくにリンゴが食べたかったわけではなく、いわばジャケ買いした。

そしたら、これがびっくりするほどうまいでやんの。

とくにすごいのは香り。 すごくリンゴ。 リンゴそのもの。 リンゴなんだからリンゴなのは当然なんだけど、香料に慣らされた自分の感覚さえ裏切るリンゴらしい華やかな香りがある。

しばらくは、そのスーパーでぐんま名月を見かけるたびに買って帰り、夕飯後に家族で食べるのが楽しかった。 ぼくがリンゴをなかば無視していた20年のあいだにリンゴ業界は確実に進化していたという再発見の興奮みたいな高揚感もあった。

もっとも、あとで調べたところ、ぐんま名月は実際には1991年にはすでに品種登録されている。 だから、この20年で進化したのはむしろ流通なのかもしれない。 実際、ぐんま名月ショックを経て町で売られているリンゴに自分の意識が向くようになると、現在ではわりといろいろな種類のリンゴが流通していることに気が付いた。 12月になると、ぐんま名月はあまり店頭に出回らなくなるが、「シナノゴールド」や「王林」のようなリンゴはまだまだ買える。 これらがまたうまい。 うまいし、いろいろな種類を食べていると味や触感のバラエティが見えてきて楽しい。

そうやって自分の感度が上がってくると、ごくふつうのありきたりなリンゴ、つまり「サンふじ」の完成度の高さを知ることになる。 サンふじ、見た目はぱっとしないけど、甘味と酸味のバランスに安定感があって、じわじわおいしい。 それでも固体や産地による差があって、これがまた楽しめる。さらに12月になると「蜜入り」と銘打った完熟のサンふじも出回る。 情報量があがって解像度が高くなることで、ありきたりと思っていた食べ物がこうも楽しくなるのだな。

年が明けると、さらにいろいろな品種のリンゴが出てくる。 そのころから、それまで放置気味だったInstagramのアカウントをリンゴ記録帳として運用するようになった。 そして珍しいリンゴに出会ったら必ず買う。これは「なかのきらめき」という2018年に品種登録されたばかりのリンゴで、柑橘類的な酸味がうまい。 今年も流通し始めている。インターネットによると「なかののきらめき」らしいんだけど、近所のスーパーでは「なかのきらめき」で、いろいろ謎が多い。

ほどなくして、小学館から出ている『りんご だんめん図鑑』という本を知り、リンゴへの関心がさらに高まった。 この本には固さと甘味-酸味の2軸四象限でリンゴを分類した図がついており、それをみながら「今年リンゴを再発見する前にシーズンが終わってしまった「秋映」とかを来年は食べてみたいね」という感じで夢が膨らむ。

www.shogakukan.co.jp

そして待ちに待った2021年のリンゴシーズン到来である。

10月末には複数の入稿&締め切りを控えながらも我慢できずリンゴ狩りに行った。

SDIM1098

これは「陽光」という希少品種で、もちろん甘いし、酸味もはっきりしているし、見た目の赤も鮮やかだしで、トータルな迫力がある。生で食べられる紅玉という趣き。

SDIM1094

そして、もぎたては本当にうまいな。 来年はぜったい、ぐんま名月を狩りに行くぞ。

2021年のリンゴシーズンはまだまだ続くので、この記事をみてリンゴが気になった方は、いまからでもいろいろ楽しめます。 ちなみに食べ方だけど、皮ごと8分の一にカットする(以下のインスタの写真の2枚めみたいな感じ)のが風味がもっとも楽しめる気がするのでおすすめ。